個人事業主が領収書やレシートなど何も資料が残っていない場合の税務調査対策
個人事業者の税務調査の相談で多いのが「何も資料が残っていないケース」です。
何も資料が残っていなくても諦めてはいけません。 対策するかしないかで大きく変わってきます。
売上は税務署側に任せてしまって、経費はこちら側で何かしらの根拠を示す必要があります。
大切なのは、
- 何かしらの根拠を示す
- 「紛失」なのか「破棄」なのか
です。
税務調査で必要となる資料
(この記事の内容について簡単にまとめて話しています。) 動画の下に記事が続いています。
税務調査は資料が必要となります。
売上と経費がわかる資料が必要です。 一般的に必要なものは、
- 売上の請求書・領収書
- 経費の請求書・領収書
- 通帳
- クレジットカード明細
- 給与明細
などがあればひとまず大丈夫です。
業種により必要書類は変わりますが、売上と経費がわかるものがあれば問題ありません。
売上は税務署に任せてもいい
税務調査では売上と経費を調査されるわけですが、売上については税務署側に任せてしまいましょう。
通帳の履歴などから売上を計算されます。 税務署側に任せると多く計算されるのでは?と不安に思われるかもしれませんが問題ありません。
売上でないものまで売上として計算されることは絶対にありません。
必要以上に多い金額を売上とされてしまうことはありません。 多く計算されることはありませんので売上は税務署に任せてしまいましょう。
国税庁HPに書類の保存についての記載があります。
→ 国税庁
反面調査には注意!
注意すべきなのは反面調査です。
反面調査は相手先を調査されることをいいます。 こちらが売上であれば相手先は経費になっているはずですので、相手先を調べればこちらの売上金額がわかるのです。
何も資料が残っていない場合は取引先に反面調査が入ることがあります。 今後の取引に影響が出る可能性がありますので注意が必要です。
税務署側から連絡されてしまうよりは事前に自分から連絡しておいたほうがいいでしょう。
もし、税務調査の過程で反面調査に入られそうであれば取引先に連絡しておいたほうが無難です。
請求書や支払い明細書などを再発行してもらえるようであればお願いしておくのも有効です。
参考 → 反面調査されるのはどんなとき?
現金取引は反面調査されやすい
売上をすべて振込でもらっている場合は通帳をみれば金額が明らかとなります。
問題なのは現金でもらっている場合です。
現金は記録が残らないですし、領収書を書いていてもそれが本当に正しいのか調査されます。 現金取引の場合は反面調査に入られる可能性が高いです。
反面調査はやめてくれと伝えてもいい
正確な売上金額を調べるために反面調査が必要だと判断されると防ぐことはできません。
こちらからいくら「やめてくれ」と伝えても反面調査をなくすことはできません。 ですが、それでもなるべく反面調査には行かれないようにした方がいいでしょう。
こちらで出来ることはするので出来れば反面調査は避けてほしいと伝えてみましょう。
経費は何かしらの根拠を出す
売上は税務署に任せてもいいですが、経費はこちら側で示す必要があります。 後述しますが、経費まで税務署に任せてしまうと著しく不利になってしまうこともあります。
やるべきことは、
- 資料を探す
- カード明細など再発行できるものはする
- 通帳も再発行する
- 実際にかかる経費を書き出す
- 直前の領収書やレシートを用意する
少なくともこれらはやりましょう。
探すこと
まずは捨てていないか、残っていないかを探してみましょう。 意外と押し入れの奥にビニール袋のまま残っていた、なんてこともあり得ます。 無い可能性が高くてもまずは探しましょう。
カード明細は再発行する
クレジットカードを利用している場合は必ず再発行しましょう! 本来はクレジットカードでも領収書が必要なのですが、クレジットカードの利用明細でも支払いの事実が確認できれば経費を認めてくれます。
カード会社によって再発行できる期間や時間が違いますが、明細がない場合はすぐに再発行の依頼をしましょう!
車の修理代などは修理工場で明細を再発行してもらえることもあります。 相手側にお願いできるものはなるべく再発行するようにしてもらった方がいいです。
通帳も再発行する
通帳を紛失している場合は明細の再発行を依頼しましょう。 銀行の窓口に行けば対応してくれます。 銀行によっては手数料がかかったり、後日に郵送となることもあります。
通帳から引き落としが確認できれば経費として認めてもらえることもあります。
何も資料がなくても書き出す
何も明細がなかったとしても、実際にかかる経費を書き出してみましょう!
過去に書き出しただけでも認めてくれたケースもあります。
例えば、
・ガソリン代 月3万円
・高速代 月2万円
・工具代 月3万円
・材料代 月5万円
・電話代 月1万円
などのように実際に仕事で使っている経費についてどれくらいかかるのかを書き出しておきましょう。
本当に何も資料がない場合でも書き出すことだけは絶対にやった方がいいです!
参考→ 領収書がなくても経費にする方法。レシートを紛失しても経費にできる場合がある!
直前の領収書などを用意する
もし本当に何も用意ができない場合はせめて直近の領収書やレシートだけでも用意しましょう。
税務調査は過去の申告内容を確認されますが、過去の資料が残っていない場合は先月や先々月のだけでも領収書を用意します。
2022年に税務調査が行われた場合は2021年、2020年、2019年など過去の申告を調査します。
当然ながらその期間の領収書が必要です。
この期間の領収書が用意できない場合は2022年の領収書だけでも提示すべきです。
税務調査が2022年10月に入ったら2022年の9月や8月の領収書、レシートを提示するのです。
そうすることで1ヶ月でどのような経費がどれくらいかかるのかをある程度把握できます。
それを元に1年間でどれくらい経費がかかるのかを想定するのです。 税務署は何かしらの根拠があったほうが認めれくれやすいです。
過去の資料が何も用意できない場合は税務調査の日の先月、先々月などの領収書レシートだけでも用意しましょう。
著しく不利になるケースもある
上記のような書類が何も残っていない場合は著しく不利になるケースもあります。
- 実際にかかる経費より少ない金額しか認めてくれない
- 消費税の経費がまったく認められない!
- 重加算税の対象となる可能性がある
- 青色申告を取り消される可能性もある
これらの可能性があります。
経費が少なくなる
領収書やレシートがないからと言って経費がまったく認められないことはありません。
仕事で売上を得ている以上は何かしらの経費はかかるはずですので、領収書やレシートがないからと言って経費が0円だということはあり得ません。
税務署側もこのあたりは考慮してくれます。 「売上があれば経費もかかる」ことは理解してくれますので、経費がまったく認められないことはありません。
ただし、本来の金額よりも著しく低い金額しか認めてもらえないケースが多いです。
合理的に一般的な金額は認めてくれる
税務署側は仕事柄どうしても疑ってきます。 「これだけ経費がかかっているんです!」と伝えてもそれが証明できるものがないと認めてくれません。
どれくらいの金額まで経費を認めてくれるかはケースバイケースですが、合理的な金額までは認めてくれます。
「合理的」という言葉は税務署が好む言葉です。
具体的には、同業者の経費率を見て判断されることが多いです。
もしくは仕事上、間違いなく必要であろうと思われるものは認めてくれます。 販売業であれば必ず仕入はありますし、一人親方であれば工具代・車にかかる経費などはみてくれます。
消費税はまったく経費が認められない
怖いのは消費税です。
消費税も経費を引くことができるのですが、領収書やレシートなどがない場合は一切経費を認めてくれません。
所得税は領収書がなくても合理的に考えて妥当な経費を認めてもらえます。 消費税はそれがありませせん。
所得税では経費を認めてくれたのに消費税は一切認められないこともあります。 対策としては、上記に挙げた再発行できる書類はなるべく再発行してもらうことや税務署と交渉するしかありません。
もし、経費を一切認めてもらえないとかなりの税金が発生します。
仮に売上1,000万円・経費500万円・利益500万円の場合は利益500万円の10%で50万円の納税です。
これが領収書がないと、売上1,000万円の10%で100万円となります。
これが何年分もとなると相当不利です。 消費税率が8%、5%のときは当然ながらそれぞれの率で計算されます。
2014年4月1日から8%となりました。
重加算税の対象となることも
何も資料が残っていない場合は重加算税という重い加算税がかかることもあります。
参考→ 重加算税になるもの・ならないもの。知っていれば防げるものもある
火災などやむを得ない場合はしかたないですが、捨ててしまっているような場合は重加算税がかかることもあります。 意図的な紛失でなかったとしても、です。
青色申告の取り消しも
最悪の場合は青色申告を取り消されることもあり得ます。 取り消されると青色申告の特別控除(10万円・65万円)が無くなるなど影響は大きいです。
「破棄」なのか「紛失」なのか
何も資料が残されていない場合にはその理由を聞かれます。 「なぜ領収書などが保存されていないのか」は必ず聞かれます。
回答によっては重加算税の対象となることもあり得ます。
よくある理由が「引越しのときに間違って捨てた」です。 税務署側もよくわかっています。
ここで大切なのは「破棄」したのか「紛失」したのかです。 破棄の場合は意図的に捨てたとして重加算税の対象となってもおかしくありません。 紛失であればそうではありません。
ただ「紛失したのです」と伝えても本当にそうなのかは疑われます。 過去の領収書などがない場合には今の(今年の)領収書を見せてくださいと言われます。
2022年に税務調査が行われると2022年分はまだ確定申告していないですから資料が残っているはずですよね。
まだ確定申告はされていないですから資料が残っているはずだ、と言われるわけです。
そこで今年の領収書も残っていないとなると「そもそも普段から保存していない」と判断される可能性もあります。
まとめ
何も資料が残っていない場合でも、何かしらの方法で売上と経費を確認しなければいけません。
特に経費についてはこちら側で何が・いくらかかっているのかを提示する必要があります。
再発行できるものはすべて再発行する。 どうしても書類が用意できないものは書き出す。
何かしらの資料は用意するようにしましょう! 「破棄」ではなく「紛失」した場合はその旨もしっかりと主張しなければいけません。
税務調査でお困りの際はご相談ください。
今までに何度も領収書やレシートがないケースのご相談をお受けしてきました。 やましいこと、相談しにくいと思うときこそぜひご相談ください。
ご相談は下記よりお願いいたします。
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