個人事業主の税務調査で多額の追徴税額が発生して一括で払えない場合はどうすればいいのか?
税務調査は数年分調査されます。
数年分の修正申告が必要となると納付すべき税額も多額となることがあります。 基本は一括払いですが、支払いが難しい場合は相談するしかありません。
今までに何人も相談して分割払いになったケースを見てきました。 分割の相談はどうすればいいのかを書いています。
一番大切なのは支払う意思を見せることです。
税務調査の追徴税額が払えない場合
(この記事について簡単にお話しました。)
税務調査での追徴税額が払えない場合には
- 分割の相談をする
- 借りて支払う
のどちらかしかありません。
厳しいことに税金は一括払いが原則です。
いくら多額の税額が発生しても一括で支払いをしなければいけないのです。 支払わなくてもよくなる(免除される)ことはありません。
大切なのは支払う意思を見せることです。
無視するのは一番いけません。
分割払いの相談をすること
税金は一括払いが原則ですが、多額の追徴税額が発生した場合に一括で支払いができる人は少ないです。
多額の税額が発生してしまったケースはなんども見てきましたが一括払いができた人はほとんどいません。
しっかりと貯蓄していればいいのですが、通常は生活費などに使っているケースが多いのです。 借りて支払うことができればいいのですが税務調査の追徴税額を借りて支払うのは難しいケースが多いです。
親族から借りて支払うことができればいいのですが、そうで無い場合は銀行などから借りることになります。
銀行からの借り入れも難しい場合は分割の相談をしなければいけません。
納税のための銀行借り入れは厳しい
正直、銀行からの借り入れは厳しいです。 特に納税のための借り入れはかなり難しいでしょう。
今までに何人も納税のための借り入れを申し込みましたが断られるケースが圧倒的に多いです。
借り入れの要件として大抵は「未納の税額が無いこと」となっているので税務調査で追加の納税額が発生していると借りることができないケースが多いのです。
ただ、絶対に借りられないというわけではありません。 ケースとしては少ないですが、納税のための借り入れをすることができた人もいます。
借り入れをできた理由はハッキリとはわかりません。
金融機関は理由を言ってくれませんからね。
借り入れができた人の傾向としては普段から銀行との付き合いがよかったのかな、と思うところがあります。
借り入れができた人で銀行の担当者と普段まったくやりとりすることない・・という人は少なかったようです。
もちろん、借り入れができるかどうかは業績なども考慮しての総合判断となりますのでなんとも言えないのですが、銀行とは普段からの付き合いを持っておいたほうがいいでしょう。
さらにケースとしては少ないのですが、まったく銀行とやり取りしていなくても借り入れができたこともあります。
絶対ダメとは言えませんので、銀行からの借り入れも検討してみましょう。
延滞税がかかる
納税が遅れると延滞税がかかります。
利息のようなものです。 納税が遅れれば遅れるほど増えていきますので早めに納付したほうがいいのは間違いありません。
延滞税の割合は結構高いです。 銀行から借りると利息がかかりますが銀行の利息よりも高いですので、借りて納税したほうが負担は少ないでしょう。
どこで分割の相談をすればいいのか
分割の相談については、各役所とすることになります。
- 所得税と消費税・・税務署
- 住民税と国民健康保険・・区役所、市役所
- 事業税・・都税事務所、県税事務所
すべての税額について相談する場合は税務署、市役所、県税事務所と3箇所に相談しなければいけなくなります。
それぞれについて相談しなければいけないので大変な負担になります。 それぞれの役所が「ウチを一番最初に払ってくれ」と言ってきますので精神的な負担もかかります。
どのように相談すればいいのか
まずは各役所に連絡をします。
「納税の相談をしたい」と連絡すれば担当者に繋いでくれます。 通常は日程調整をして後日に行くことになります。 その場で必要なモノを確認しておくようにしましょう。
相談した際に次回までに用意すべきモノなどを伝えられます。
いつ相談に行けばいいのか
納税相談のタイミングは税務調査が終わってから、となります。
- 税務署(所得税・消費税)は税務調査が終わった後すぐ
- 市役所(住民税・国保)や県税事務所(事業税)は通知が来てから
税務署については、税務調査が終わる際に調査官から納税について尋ねられます。
一括で納付できるのかどうかの確認がありますので、難しい場合は分割の相談について手配してくれることもあります。
税務調査の調査官と納税相談の担当者は別となります。
通常は税務調査の調査官から納税相談の担当者に引き継ぎが行われます。 税務署へ相談するタイミングは調査の担当者に聞いてみたほうがいいでしょう。
納税の猶予
税務署に納税相談すると猶予制度を勧められることがあります。 申請が認められると延滞税が免除されたりメリットもあります。
もし、税務署側から提案が無い場合は猶予制度の申請ができないか確認してみましょう。
参考→ 換価・納税の猶予制度とは?延滞税が免除されることもある
税務署も融通をきかせてくれる?
猶予の申請書を提出した際に税務署の担当者から「これでは通りません」と言われてしまったことがあります。
もう一度全部書き直しとなったのですが、その場で担当者が指導してくれたのです。
数字上は毎月相当な金額の返済額となっていたのですが「これじゃ払えないですよね」と言って毎月の返済額が現実的に支払可能な金額になるように指導してくれたこともあります。
税務署には相談しにくいイメージがありますが積極的に相談して納税する意思を示しましょう。
分割相談では何を話すのか
すでに税金の金額は確定していますので、どうやって支払うかの相談となります。
- 毎月の収入・経費・生活費・借り入れの状況
- 財産状況
について聞かれます。
税務調査の際にある程度確認されていますが担当者が変わりますでもう一度話をすることになります。
収入や財産状況を聞かれるのは当然ながら「毎月いくら支払いができるのか」「担保があるか」の確認です。
財産を奥さんに移す?
実際に税務署で徴収担当をしていた人に話を聞いたことがあります。
夫の税金なので銀行預金をすべて妻名義にすれば差し押さえを逃れられると考えた人がいたそうです。
明らかに差し押さえを逃れるためと判断された場合は税務署側も強硬な姿勢をとって、妻名義に移動したお金についても無かったことにする手続きをしたこともあるようです。
理不尽なことを言われることも
納税相談をした際には生活費や借金の状況も聞かれます。 知人から借り入れがあり毎月10万円返済している人がいました。
納税相談の際に「この借り入れを一括で返済すれば毎月10万円返済していた分を納税に充てることができますよね」と言われたのです。 そもそも一括返済できるお金がないから分割返済しているのです。
税務署がどこまで本気で言ったのかわかりませんが、理不尽なことを言われることもあります。
できないものはできないとハッキリ伝えるようにしましょう。
税金の分割は何年認められるのか
分割が認められるかどうかはケースバイケースなので何とも言えません。
認められたとして何年間認められるのかも何とも言えないところです。
2年のケースもあれば5年以上支払いをしている人もいます。
ネットの情報ですと1年や2年と書かれていることが多いでがケースによって違いますので何とも言えないところです。
大切なのはちゃんと納税する意思を見せること
納税の分割相談をする際に一番大切なのは納税する意思を示すことです。
分割になると毎月のように税務署と話をすることになることもあります。 電話があったり書面が届くこともあります。
それが続いていくと次第に連絡を取らないようになってしまうこともあります。
ただでさえ税務署とやり取りをするだけで負担に感じるのに、毎月のように精神的に負担の大きい相談をすると連絡したくないと思ってしまうのです。
差し押さえを防ぐために連絡はちゃんとする
一番心配なのは差し押さえです。 いつまでも税金を支払わずにいると差し押さえされることがあります。
ただ、税務署も何が何でもといった強硬的な態度を取ることは少ないです。 今までなんども分割相談をされている人をみてきましたが、実際に差し押さえまでされたケースはごくわずかです。
差し押さえをされた人は税務署との連絡をしなくなってしまった人たちでした。
税務署との連絡がイヤになってしまって、電話や書面が来ても連絡しなかったのです。 一度連絡がなかっただけでいきなり差し押さえはされません。
通常は何度か連絡があります。
なんども連絡したのにまったく連絡が取れない状況になると差し押さえされます。 連絡取るのがイヤになることもあるでしょうが、税務署から連絡が来たらちゃんと折り返しの連絡をして納税の意思があることを示すようにしましょう!
どこから・どの税金から払うべきか
上述したように3箇所に相談しなければいけない状態ですとかなりの負担となります。
一般的には事業税は負担が少なくなるケースが多いので、支払いできるようであれば事業税だけ先に支払ってしまうのも手です。 そうすれば相談するのが2箇所になります。
その年の税金がやすくなる国保
各役所との関係もありますので難しいところではあるのですが、どの税金から支払うか迷ったら
- 国民健康保険
を支払うようにするのも一つの方法です。
理由は、その年の確定申告で控除できるからです。
消費税と事業税も原則として申告書を提出した年度の経費となります。
国民健康保険は多額の支払いをするとその金額がすべて所得控除にできますのでその年の税金が安くなります。
実際にあったケースは税務調査で発生した消費税や事業税、国民健康保険を何百万円も支払った関係で所得が無くなりその年の税金が発生しなかったことがあります。
これは税務調査によるものなので税務署側も把握しており、何ら怪しまれることはありません。
所得税・住民税は経費にできない
所得税や住民税はいくら支払っても経費にすることはできません。 何百万円支払ってもまったく経費にできないのです。
同じ金額払うなら控除になるものを
もし100万円の納税できるお金があるなら国民健康保険を支払えば100万円が控除になります。 その分、その年の税金が安くなります。 もし100万円で所得税や住民税の支払いをするとまったく経費にできないのです。
もちろん他の税金を支払わなくていいというわけではありませんから、他の税金とも調整が必要となります。
市役所の方が厳しい?
今まで何件も見てきた感想ですが、税務署よりも市役所の方が厳しいと感じることが多いです。
税務署はちゃんと相談して連絡していれば強硬的な態度を取ってくることは少ないのですが、市役所はそうではありません。
「○月○日までに全額納付されない場合は差し押さえします」と言われたことが何度かあります。 税務署にはちゃんと相談しているのに市役所には相談しない人もいますが、市役所にもちゃんと相談するようにしましょう。
税務調査で発生する税金は何があるか
税務調査によって修正すべきものがあると追加の税金が発生します。 修正申告した際に発生すべき税金等としては一般的に
- 所得税
- 消費税
- 住民税
- 事業税
- 国民健康保険
があります。
さらに、加算税として
- 過少申告加算税
- 重加算税
- 無申告加算税
- 延滞税
などが状況によりかかります。
これらが一年分だけでなく、数年分ともなるとものすごい負担となります。
今までも住宅ローンくらいの納税が発生してしまったことがあります。
さらに所得制限があるものの支給を受けていると返還が必要となる場合があります。 実際にあったケースでは、子供に障害があり市から障害手当を支給されていた金額について返還を求められたことがあります。
所得の制限があり制限以下の金額だったので支給されていたのですが、税務調査により所得が増えて制限を超えてしまったのです。
思わぬ負担が発生する可能性もあります。
税金を支払う順番
まず、支払いをどうするのかの前になるべく税金の負担を減らすことを考えるべきです。
以下の記事を参考にしてみてください。
税務調査で確定した追徴税額の支払いは原則として一括払いです。 支払う順番としては、
- 所得税と消費税
- 住民税、事業税、国民健康保険
- 加算税(過少申告加算税、重加算税、無申告加算税)
- 延滞税
となります。
2から4は前後する場合もあります。
まず最初は所得税と消費税
税務調査で追加の税金が発生した場合にはまず最初に支払うべき税金は
- 所得税
- 消費税
です。 これらは国税といって税務署に支払うものとなります。 税務調査が終わる際には一般的に修正申告書を提出します。
税務調査によって指摘された誤りを修正して申告書を提出するのです。
修正申告書を提出した段階で税額が確定するので、提出と同時に納付が必要となるのです。
次に住民税や事業税など
次に支払う税金は住民税や事業税です。
税務署に提出した申告書の情報が回ってから通知が届きますので時期は遅くなります。 税務署に申告書を提出した後に1、2ヶ月後に通知が届くことが多いです。
通知に納付期限が記載されていますので納付が難しい場合は連絡して相談することとなります。
先述しましたように税務署よりも市役所の方が対応が厳しいケースもあります。
支払いが難しい場合は市役所にも必ず相談するようにしましょう。
まとめ
税務調査の追徴税額は何年分にもなり多額になりがちです。
とても一括では支払いできないくらいの金額になってしまうこともあります。 もし一括での支払いが難しい場合には必ず相談するようにしましょう!
無視したり放置してしまうのが一番いけません。
そもそも、税務調査があっても追加の税金が出ないようにしっかりと確定申告をしておくことが一番負担が少なくなります。
こちらの記事もおススメです!

税理士 内田敦 【個人事業主の税務調査専門】



最新記事 by 税理士 内田敦 【個人事業主の税務調査専門】 (全て見る)
- 個人事業者は単純に利益が少なすぎると税務調査が行われやすい - 2024年10月4日
- 【個人の税務調査の実例】現金売上の領収書束を何枚か破り捨てていた - 2024年9月18日
- 【個人の税務調査の実例】提出のときに何も言われないから適当に確定申告していた - 2024年8月21日